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ラブホテルを舞台に描かれる切なさの中の暖かみ『ホテルローヤル』【読書屋!】

今週のお題「読書の秋」

どうも、ケスイケリーガです!

149回直木賞受賞作、桜木紫乃『ホテルローヤル』を紹介します

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 『ホテルローヤル』という小説の背景

この『ホテルローヤル』はラブホテルを舞台にした小説です

そして、第149回直木賞の受賞作でもあります。

 

その授賞式の記者会見で桜木紫乃さんの実家はラブホテルを経営していたそうで、ラブホテルが小さいころから身近な存在だったそうです

 

身近な存在だったゆえに小説の舞台として選択し、そこに関わる人々の描写が生き生きとしているのでしょう 

  

また、『ホテルローヤル』は「グランドホテル形式」という展開をする短編連作小説の形式を取っています。以前紹介した折原一『グランドマンション』も「グランドホテル形式」でしたね

 

グランドホテル方式(グランドホテルほうしき)は、映画小説演劇における表現技法のことで、「ホテルのような一つの大きな場所に様々な人間模様を持った人々が集まって、そこから物語が展開する」という方式のことである

グランドホテル方式 - Wikipedia

ざっくりいうと一つの舞台を中心に異なる登場人物のストーリーが展開され最終的にそれぞれのストーリーが重なり合っていくという小説の展開方式をいいます。

 

ざっくりあらすじと感想

 

この小説のタイトルにもなっている「ホテルローヤル」というラブホテルを舞台に7編の短編が収められています。

 

グランドホテル形式を取りながら、各短編の時系列は現在から過去へ、廃墟となった現在から開業時の出来事がそれぞれの登場人物の視点から描かれる

 

ラブホテルが舞台だからといって情事ばかりが描かれていることはなく(むしろあまり描かれてない)ラブホテルに来る客、経営者、従業員などが各短編の主人公

 

・廃墟となったホテルローヤルの一室でヌード写真を撮らせる女と同級生の物語

・ホテルローヤルに生まれ廃業を迎えた29歳の女とアダルトグッズの販売員の物語

・狭いアパートでは気が高まらないとホテルローヤルにやってきた夫婦の物語

・ホテルローヤルで心中する先生と生徒の物語

・寺の維持のため檀家に体を提供する住職の妻の物語

・ホテルローヤルの掃除員と10歳年下の無職の夫の物語

・ホテルローヤルの開業を意気込む男と21歳年下の愛人の物語

 

どの短編の主人公も社会の日のあたらない部分を生きる人たち。どこか歪んでいて、おかしな境遇にあるともいえる。社会の陰に在る人々の姿を描き出していて、誰もが苦悩や虚しさ、浅ましさに満ちている

 

しかし、そういう人たちにも小さな幸福や望みを得ることはあり、その場面をホテルローヤルとともに描写する

 

その瞬間に読者の心をホッとさせる温かみが表現される。

 

 

社会の日なたを歩く人間たちの社会では日陰として消えてしまうような部分に目を向け、案外それも悪くないんじゃないかと思わせてしまうストーリーの構成はすごいの一言。

 

文章のリズムも軽やかでページはどんどん進む

さらに、ここぞという時の一文の美しさはずば抜けている

まるで詩を読んでいるかのような美しい文字の音が聞こえてくる

 

特に、各物語の最後の一文には、「まだその物語の中にいたい、でもこの先どうなっちゃうの」と思わせるような深みのある文章がくる。読後感がすごくいい。

 

"「夢と希望」は、廃墟できらきらと光る埃にそっくりだった。いっとき舞い上がり、また元の場所へと降り積もる。ここからでて行くこともなければぬぐうような出来事も訪れない。"

 

好き嫌いはあるかもしれないけれど、悲しみや苦しみの中にある温かみを感じられたらとっても好きになっちゃう小説です

それでは、グッバイ!

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