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読書屋!BookBankどっとこむ

◇年間100冊読書日記◇趣味の読書の語り部屋

ホームレスのプライドが銀座の街を跋扈する!『ヤッさん』【読書屋!】

どうも、こんにちは!アリガテンです。

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今日は原宏一『ヤッさん』を紹介します。原宏一さんの小説はとにかくキャラクターが濃い。キャラクターが立っているからストーリーがテンポよく進んでいく。ストーリーの設定がすこし無茶があったとしても、その無茶への疑問の前にキャラクターへの愛着が沸いてしまうというものが多い印象です。

今回紹介する『ヤッさん』も例に洩れず強烈な個性を物語の中に存分にまき散らしていきます。リズムよくページをめくれストーリーもシンプルなので読書したいけど易しい小説がいいなという方にはおすすめできます。まぁ、言ってしまえば原宏一さんの小説はどれも読みやすくて面白いものばかりだと思います。

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銀座を拠点にする2人のホームレスが東京の「食」を巡って縦横無尽に活躍する物語。ホームレスに成りたてのタカオは銀座を拠点にするホームレスのヤッさんに弟子入りする。ヤッさんはホームレスは絶対に世間様に迷惑をかけてはいけないというホームレスらしからぬ矜持を持っており、しかも銀座を中心とする東京中の飲食業界につよい影響力を持つホームレスだ。ホームレス故に様々な情報を仕入れ、その情報を求めている飲食業界の人々へ提供する。その見返りにまかない飯を食わしてもらうという生き方を貫く。ヤッさんもタカオもホームレスだが、人と人の真剣な付き合いをすることで信頼関係を築き生かしてもらっているというホームレス哲学を持つ。

この2人が彼らの周囲で起こる様々な出来事に巻き込まれつつ、あくまで人の為に動いていく。そして、次第にヤッさんの壮絶な過去が明かされていくとともに、ヤッさんにおんぶにだっこだったタカオが独り立ちしていく姿が描かれていく。

 

わたしたちが生きる社会には様々な立場の人間がいる。全ての人は誰か繋がっている。その繋がりを疎かにしてはいけなく、繋がりが無い人は生きていけないに等しい。本書は2人のホームレスの活躍を描くが、その根底にあるのはその人の肩書や立場がどうであれ人と人との関わり合いをすることで信頼関係を築き上げることができる、そしてその信頼関係がなければどんな人であっても生きていくことはできないということを描いている。同時に相手を立場や肩書で判断せず、人として見ていかなければいけないことを再確認させられた。

 

"「ただし、政治には口出しできねぇが、人間には口出しできる」ヤッさんがにやりと笑った。ホームレスだって立派な人間だ。人間対人間としてなら対等に物が言い合える。その点だけは揺るぎない真実だから萎縮することはない、と言っているのだった。"

原宏一さんのほかの作品と同様にとにかくヤッさんとその周りの登場人物たちの個性が光る。その個性は時にユーモラス、時に真剣直球。気付いたときには彼らの個性に私たちの心は掴まれてしまっている。

読み易く面白い小説です。ぜひおすすめです!