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痛快なストーリー!ウイスキーに誇りを持った男たちの大逆転劇!『ウイスキーボーイ』吉村喜彦

どうも、こんにちは!アリガテンです。

ウイスキーを飲むならスコットランドのシングルモルト「CAOL ILA -カリラ-」と決めているのですが、いろいろなウイスキーに手を出したくなる小説を読んでしまいました。本当に吉村喜彦さんの書く小説は酒が美味そうで美味そうで。今日は吉村喜彦『ウイスキーボーイ』を紹介します。

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以前、こんな記事も書いています。よかったらどうぞ。

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 吉村喜彦さんは京都大学卒業後サントリーの宣伝部にお勤めになった後、作家に転向している方です。それゆえ、お酒業界に関する知識は本物でサントリー時代の経験が色濃く小説に描かれ、舞台設定や登場人物たちの個性や背景のリアリティが鮮明で彼の小説の中にぐいぐい引き込まれてしまいます。

そしてなによりお酒の知識が半端じゃないわけです。お酒の知識をとくとくと語るシーンが比較的多いのですが、そのどれもが「へー!」と唸らされてしまうものばかり。特に本書はウイスキーの醸造のされ方や有名な銘柄がどのようなブランディングによって世に浸透したかなどウイスキー関連の知識が惜しみなく提示されています。

 

主人公は、酒業界のトップを走る大企業の宣伝部に勤めるサラリーマン、上杉 朗。ウイスキーの宣伝を担当し、上杉自身もウイスキーを愛しウイスキーはこうあるべきという哲学を持って日々の仕事に向かっている。他の宣伝部員も同様かというとそうではない。ウイスキーをただの1商品としか見ておらず目先の利益に繋がる哲学も何もない。そもそも会社の雰囲気として、自分たちが務めるトップ企業の商品が売れないはずはないと売上が低下しているにも関わらずその本質の問題に目を向けず消費者に迎合するようなものばかりを世に送っている。そんな体制の会社・宣伝部に辟易しながらも会社の多数派に押し切られる形で不本意な広告を打たざるを得なかったり恥さらしともいえるようなウイスキーの発売に関わらなければならない日々が続く。

ウイスキーブレンドの責任者との距離が縮まり、本来含まれていないはずの輸入酒が自社製品に含まれていることが知ってしまう。つまり、消費者に嘘をつき続けていたのだ。その事実を広告の形で世に広めなくてはと決意し、大企業と上杉の戦いは火蓋を切る。

 

とにかくこの小説の面白いところは大企業に巣くう悪を熱血漢な主人公上杉が広告マンとしてのプライドをかけて勧善懲悪する大逆転劇にあるといえる。さらに、その大逆転劇に至るまでの葛藤やウイスキーへの哲学が一致する同志の存在が物語に深みを与える。何か大きなものと戦うことは誰にとっても怖いことだ。それでも、プライド故にその戦いへの覚悟や勇気をもって臨まなければならない時がある。そうでなければプライドが殺されてしまうのだから。ウイスキーへのプライドを守るために反骨精神を掲げ猛然と戦う男の様が描かれる。

 

"自分の思いがあるからこそ、他人の思いとも交われる。その交点を探ることだ。でも、ややもすると、他人のネガティブな思いとも交わるようになる。アンチも出てくる。人間は憧れと嫉妬の動物だ。夢に向かって進むひとを邪魔する輩はたくさんいる。真っ直ぐな思いをもって生きる――それは、見えない島をめざして海を渡っていくようなものだ。"

 

私たち、だれもがぶちあたる葛藤、この葛藤に真っ向から戦うことを避けてばかりかもしれないが、もしあなたがその葛藤に打ち勝ちたいのであれば、ウイスキーに誇りと愛を持ち戦いに挑む男の姿を見てみてほしい。きっと勇気がわいてくるはずだから。

個人的には大好きな作品なので、ぜひ読んでみてください。

 

吉村喜彦さんの小説『バー・リバーサイド』もぜひ。

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