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読書屋!BookBankどっとこむ

◇年間100冊読書日記◇趣味の読書の語り部屋

西加奈子という小説家との初対面はもうなにも言えねぇ『漁港の肉子ちゃん』【読書屋!】

どうも、こんにちは!アリガテンです。

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 いろいろなメディアにも出ている作家 西 加奈子の作品を初めて読みました。なにかの番組で(たしか「さんまのまんま」だった気がするが・・・)彼女が出演しているのを見た時の印象は「どえらい関西弁のパワフルな人だなー」といったところでした。まさか、その印象がそのまま小説に描き出されているとは到底知らずに手に取ってしまいました、西加奈子『漁港の肉子ちゃん』

いや、はんぱないっす。なにも言えない・・・ってのが読後の第一印象。こんなに作家の個性が全面に出ているパワフルな小説、私は知りません。小説って型なんてないんだなって、そんなことすら思わせる特異な文章。ちょっと予想以上に打ちのめされてしまいました。

タイトルにもなっている「漁港の肉子ちゃん」とその肉子ちゃんの娘、喜久子がこの小説の主人公。ある漁港を舞台にこの親子の周囲で起こることを描いた小説だ。

肉子ちゃんは全てがストレートで自分の思ったことが全て言動として出てしまう、しかもかなりオーバーな形で。喜ぶときには大いに喜び、驚いたときには大いに驚く。まさにLet it goどこまでも突き抜けてありのままなのだ。

一方、娘の喜久子は小学校5年生の思春期のスタートラインに立ったような女の子。クラスの女子の派閥関係や男子との関わりなどに神経を使う。見た目も肉子ちゃんとは違ってかなり美形な女の子、もちろん彼女は肉子ちゃんの実の娘ではないことを理解している。その背景もあるからか、喜久子は肉子ちゃんにも友達関係でも漁港町の誰に対しても迷惑にならないように気を使って生きている。

この二人の母娘が小さな漁港町で様々な人と関わり合いを持ちながら暮らしていく。そして、肉子ちゃんと喜久子の過去、関係性が見えた時、この小説はすげーと思わざるを得ないだろう。

 

私たちはだれもが、世間体や外聞を気にするあまり自分自身に正直になることができない時があるだろう。

喜久子がまさにそうであり、自分自身に正直に生きることと誰にも迷惑をかけてはいけないといった自分を抑えて生きることの間で揺れる。しかも、小学5年生の少女という設定が精神的にも身体的にも変化する途上にあることによる不安定さをうまく映し出しているように思う。この一方で、肉子ちゃんはそんなことは全く気にしない100%自分自身に正直なのだ。

この対比が本作を面白おかしくさせ、考えさせられるテーマを提示している。

 

"肉子ちゃんは、佇まいそのものが、不細工なのだ。「でもな。」私は、鼻水と、涙だらけの、肉子ちゃんの手を取った。肉子ちゃんと対照的に、私は、ちっとも泣いていなかった。「うちは、肉子ちゃんのことが大好き。」"

ちょっといまの自分ではうまくこの小説をとらえきれていないというのが正直なところ。時間をあけて、じっくり西加奈子作品に向かってみようと思う。なんだか小説の固定観念をぶち壊された気持ちです。