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◇年間100冊読書日記◇趣味の読書の語り部屋

<『ホテルローヤル』桜木紫乃>ラブホテルを中心にストーリーが流れてく!

どうも、こんにちは!

三度の飯より、本が好きアリガテンです!

 

 

今日は149回直木賞受賞作、桜木紫乃『ホテルローヤル』をご紹介します!

 

以前、このブログで紹介した折原一『グランドマンション』と同じ「グランドホテル形式」という展開をする短編連作小説です。

 

 

グランドホテル形式というのは、一つの舞台を中心に異なる登場人物のストーリーが展開され最終的にそれぞれのストーリーが重なり合っていくという小説の展開方式をいいます。

 

 

日陰の中の温かみ。私がこの本を読んだ第一印象だ。

 

このタイトルにもなっている「ホテルローヤル」というラブホテルを中心に展開されていきます。

 

ラブホテルという身近には在るが、注目を浴びづらい場所を舞台にすることで、社会の日のあたらない部分の人間模様をうまく切り取っています。

 

ラブホテルが舞台だからといって情事ばかりが描かれていることはなく、むしろほとんど描かれていないような、ラブホテルに来る客、経営者、従業員などを主人公にしています。

 

 

どれをとっても社会の陰に在る人々の姿を描き出していて、誰もが苦悩や虚しさ、浅ましさに満ちている。

 

しかし、そういったものに満ちている人でも人との関わりがあり、その関わりの中でも、小さな幸福や望みに出会い、読者の心がホッとするほどの温かみを鮮明に表現している。

 

社会の日なたを歩く人間たちの社会では日陰として消えてしまうような部分に目を向け、案外それも悪くないんじゃないかと思わせてしまう文書力は圧巻だと思う。

 

 

文章のリズムも軽やかでページはどんどん進む。それは、無駄な部分がなく、目の前の人間模様を淡々と文字にしているからのように思う。無駄がないとでも言えるだろうか。

 

それでも、ここぞという時の一文の美しさはずば抜けている。まるで詩を読んでいるかのような美しい文字の音が聞こえてくる。

 

特に、各物語の最後の一文には、「まだその物語の中にいたい、でもこの先どうなっちゃうの」と思わせるような深みのある文章がくる。読後感がすごくいい。

 

 

 

"「夢と希望」は、廃墟できらきらと光る埃にそっくりだった。いっとき舞い上がり、また元の場所へと降り積もる。ここからでて行くこともなければぬぐうような出来事も訪れない。"

 

 

余談ですが、作者の桜木さんが直木賞を受賞した際の記者会見でコメントしていたところによると、桜木さんの実家が実はラブホテルだったそうで、ラブホテル自体が身近なものであったようなのです。その自身の身近にあったからこそ、様々な思いがありこの作品が描かれたのだなと思います。