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◇年間100冊読書日記◇趣味の読書の語り部屋

<『苦役列車』西村賢太>俺のダメなところを全部見せてやるよ、そんな私小説!!【読書屋!】

どうも、こんにちは!

三度の飯より本が好き、アリガテンです!

 

今日は西村賢太『苦役列車』を紹介します。

11年の芥川賞受賞作品ですね!

 

作者の西村賢太さんはなかなか面白い人柄で、芥川賞受賞のインタビューの際に有名になったら風俗行けなくなっちまうというような発言をし、お茶の間を釘づけにさせていました。

 

彼の作品は「私小説」というジャンルに分類されるかと思います。

 

私小説というのは、作者の実体験を素材に書かれた小説という意味です。

 

この『苦役列車』は19歳の青年が主人公だが、とにかくダメなやつなんだ。

 

 

日雇いの仕事を繋いで何とかその日の飯と酒とたばこにありつく様。

 

毎日出勤するわけでもなく、金がなくなってどうしようもないから仕事に行く。

 

無断欠勤は当たり前。

 

とにもかくにも僻みやすく、他人に対して尊敬の念が無い。

 

 

学歴は中卒。

 

そのことを気にしていないなら気持ちがいいものを何かとつけて学歴を気にする。

 

学歴コンプレックスが前面に出ているわけだ。

 

 

"そして更には、かかえているだけで厄介極まりない、自身の並外れた劣等感より生じ来るところの浅ましい妬みやそねみに絶えず自我を侵食されながら、この先の道行きを終点まで走ってゆくことを思えば、貫多はこの世がひどく味気なくって息苦しい、一個の苦役の従事にも等しく感じられてならなかった。"

 

 

でも、彼のダメなところって誰もが潜在的に持っているものだと思う。

 

掃除をすこしサボるとすぐに部屋が汚くなってしまうのと同じくらいの簡単さで、人は油断したら彼のようなダメなところが表に出てくると思う。

 

私はこれまでかなり自分中心に生きてきたと自分自身で自覚している。

 

それ故に、できる限り謙虚に謙虚に生きて行こうと意識するようにしている。

 

でも、その意識がふと途切れてしまったときに、自己中心的な自分がむくりと腰を上げ顔を出す。その自分が嫌で仕方無いときがある。

 

まるで主人公の彼と同じなんだ。

 

程度の差こそあれ、誰もがダメな自分を隠し持っていて、油断するとそれが出てきてしまう。その一方で、そのダメな自分を私小説という形で公にさらしている作者の姿勢や精神構造がこの作品になんとも言えぬ凄みを与えているのだと思う。

 

 

自分の一番ダメなところを人に晒すというのは相当な胆力があって初めてできることだと思う。

ダメなやつだけど、強いんだ。多くの人は自分のダメなところは晒せない。ちゃんとしているやつかもしれないけど、弱いんだ。

 

 

あなた自身の内面と向き合ういい機会を提供してくれる一冊かもしれません。