読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

読書屋!BookBankどっとこむ

◇年間100冊読書日記◇趣味の読書の語り部屋

<『肉骨茶』高尾長良>「食」という誰もが行う生存行為への反逆とその恐怖!!【読書屋!】

どうも、こんにちは!

三度の飯より本が好きアリガテンす。

 

 

高尾長良『肉骨茶』を紹介いたします!

読後の感想はただただ「おえっ、人間って怖い。」なんて思ってしまいました。

 

登場する人間の生々しさが精緻に描かれていて、しかも、普段は目を背けたり隠したくなったりする「人間の美しくない部分」がやけにリアルで。いや、美しくないところこそが人間を人間足らしめていると言わんばかりの描写をする。

 

その描写のリアルさと主人公の赤猪子(あかいこ)の「食べること」に対する恐怖心と食事を勧める人たちとの狭間で恐ろしいほどに揺れる心が見事なまでに波長が合い、読者を不思議な物語の中に落とし込む。

 

 

赤猪子は17歳の少女だ。拒食症であることを除いては普通の女の子。

 

「食べること」に対する恐怖心を常に抱き「食べること」を拒む。彼女が病的なまでに痩せていくのは自然の理。

 

痩せる彼女を心配し、周囲の人々はもっと食べるようにと言う。その言葉が彼女を苦しめる。親からの脱走計画を立ててしまうほどに。

 

 

 

人の善意は時に善意の対象者を苦しめる。善意に苦しめられたことは誰もが一度はあるのではないだろうか。

 

たとえば、善意に苦しめられた経験が私自身にもある。

 

たまたま食に関わることだが。私は食べ物の中で唯一「生魚」が苦手で、刺身も寿司も口に運ぶことすら困難だ。特に、マグロとサーモンは質が悪い。あの必要以上に主張する赤っぽさ、意味不明なオレンジ色、気持ち悪いこと極まりない。

 

だが、多くの人によってはごちそうだ。例に洩れず、私もごちそうとして寿司が目の前に運ばれることがあった。寿司屋に連れてきてくれた人はまさに善意。私が喜ぶと思っているわけだ。それを私自身もわかっている。なんともいえぬ申し訳なさ。これが続けば気が狂う気持ちもわかる。

 

 

 

脱走計画は上手くいく。彼女は親から離れることに成功する。

 

しかし、その脱走した先で、彼女は「肉骨茶」という食べ物に出会い、そして、もてなされる。

 

「肉骨茶」を食べなければならない状況に追い込まれ、それはつまり彼女にとって、恐怖の天井を突き破るかのような事態だ・・・。

 

"「飲みこめ!全部飲みこめ!」だが歯型を取るときのように詰め込まれた骨付き肉に食い入った歯は嚙みくだくことさえできず、赤猪子は呻きながら臭い肉を苦心して吐き出した。"

 

この作品を当時20歳で書きあげたことがただただすごいと思う。

人間をよりリアルに捉えたい方にはオススメです。