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◇年間100冊読書日記◇趣味の読書の語り部屋

詩ってやつは僕を気持ちのいい言葉探しの旅に誘う『夜のミッキー・マウス』【読書屋!】

どうも、こんにちは。アリガテンです!

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小説を読むことが多いですが、今日はすこし趣向を変えて詩集を紹介したいと思います。古本屋さんで見つけた懐かしい名前「谷川俊太郎」。

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もちろん有名な方ですが、私には「懐かしい」という表現がぴったりなんです。というのも、私の通っていた小学校の校歌の作詞が谷川俊太郎さんだったからです。古本屋さんで手に取って「詩集かぁ。普段よまないなぁ。」と思いながら手に取っていました。谷川俊太郎『夜のミッキー・マウス』を紹介します。

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もうすぐ26歳の少年は何者であって何者になって何を成し遂げるんだろうか【雑記屋!】

どうも、こんにちは!アリガテンです。

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いつにもましてキザでセンチな嫌なタイトルをつけてしまいました。中学生のツイートみたいですね。我ながら恥ずかしい。今日は自分の思いを真っ直ぐに綴るだけです。25歳のどこにでもいる男が男らしさの欠片もなく悩みを露見させるカッコ悪い文章です。

26歳間近になって、何者にもなりきれていない自分に焦りや失望に近い感情が自分を責めてくるんです。周りの優秀な友人たちがどんどん素敵なことを見つけ夢中になっている。一方、自分は過去と未来ばかり見つめ、現在の自分が何を為すべきか、何を為したいのか、どうもはっきりしない。ただひとつだけ明確なのは、文章を書いて多くの人に思いを伝え共感を得たいと思っている。あわよくば、それが日本のため、世界のためになればと願う。物語には、文章には、言葉には、そういう力があるって信じているから。

一応言っておくと、別に病んでるわけではない。むしろ健全に悩んでいる。この悩みを乗り越えないと、未来の自分自身が現在の自分自身に対して、決して届かない剣先をむやみやたらに振り回してしまいそうだから目をそらさずに向かい合っているつもりだ。だから、悩む。目の前の仕事に一生懸命になることが自分自身の目指すものに近づくのか疑問を持ってしまう。

日本全体を見ても世界全体を見ても、私自身は平均以上の恵まれた暮らしをしている。人並みに教育を受け、人並みの会社で、人並みに面白いと思える仕事をさせてもらっている。友達もいて、両親兄弟とも仲がいい。それでも、自分自身だけが不幸の中心にいるかのようで、自分以外のなにかのせいにしてしまいたいと叫ぶ寸前で踏みとどまっている。私は何者であって、何者になるんだろう。そして、何を成し遂げ、死んでいくのだろうか。

ある企業でファイナンス系の部署で働いている。仕事は面白い。もともと頭を使うことは好きだし、今の仕事は考えて考えて実行に移す類のものであるから、飽きずに楽しめている。だが、これをやって何になるんだって本気で疑問に思ってしまう自分が間違いなく存在する。その一方で、全く逆方向に向いた同じ程度のベクトルも存在して、こう叫ぶ。「若いんだから何をやっても経験だぜ!」。

1つを見定めて何にもブレず全力で向かっていきたい気持ちと幅広く経験して自分の枠を広げたい気持ちが交わることなく逆方向に進んでいく。1つのことに集中して取り組む人は幅広く経験を積む人のことを羨み、幅広く経験を積む人は1つのことに集中して取り組む人を羨む。時間だけは平等でどう使うかが異なる。私はまだ、その時間のつかいかたを見定めている。少なくとも文章を書きたいという思いだけは、どちらのベクトルの向かう先にあるようだけれど。

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超能力を無効化する超能力が生み出す設定の妙技『愚者のスプーンは曲がる』【読書屋!】

どうも、こんにちは!アリガテンです。

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面白い小説をまた見つけてしまいました。今日は、桐山徹也『愚者のスプーンは曲がる』を紹介します。2017年の「このミステリーがすごい!」大賞の隠し玉作品として出版された小説です。隠し玉作品というのはどういうことかというと、「このミステリーがすごい!」大賞に応募された作品の中から大賞にはならないが、面白く期待できるものを出版してみようという趣旨のものになります(アリガテン見解)

 

この小説にかんしてはストーリーの基盤となる設定が小説の面白さのほとんどを決めたんではないかと思っています。この小説を特徴づける一番大事な設定として、実はこの小説「超能力」が存在する世界が舞台なんです。超能力は誰もが持っているというわけではなく、超能力を持つ人間は限定的であり、超能力を自覚する人も自覚しない人がいる設定です。本書の中では超能力という言葉で表現されていますが、どちらかというと特殊能力とイメージしたほうが近いように思います。たとえば、液体の水温を自由に操れる力や毒が効かない力、透視する力など多様な特殊能力が登場します。

さらに、その特殊能力を持つ人間はなんらかの代償をもつという設定になっています。たとえば、熱いものを食べられない代償、常に頭痛がする代償、笑うことができない代償など、特殊能力と同様様々な代償が登場します。設定が非現実的な小説って個人的にはあまり好みではないんですがなにより主人公の設定が、超能力という非現実的な設定をアリにさせてしまっているんです。

主人公の設定はなんと彼の周りでは超能力も代償も無効化されるという超能力なんです。これによって、小説の中で多様な超能力を持つ登場人物がいるにもかかわらず、その肝心な超能力を発現させる場面がほとんどないんです。物語の中心にいる主人公が作者がわざわざ設けた「超能力」という設定を無効化してしまっているのです。つまり、非現実的な設定を主人公の設定によって打ち消し、非現実的な世界が舞台だが非現実的なものは物語の前面に出てこないという構成になっています。

 

主人公はとにかく運が悪い男子大学生の瞬。彼は自分では気づいていなかったが「超能力と代償を無効化する」という超能力を持つ。その代償としてとにかく運が悪い。超能力に気付かない瞬は大学入学と同時に上京し、そこで2人の超能力者に襲われる。彼らにとって「超能力を無効化する」能力というのは非常に危険であり、悪い芽は早めに摘むに限る宜しく瞬を殺すというミッションがあった。しかし、ひょんなことから命拾いした瞬はこの2人が所属する組織にアルバイトとして働くこととなる。そのアルバイト先で、超能力が絡んだ数々の事件の情報を入手していく。そして、ある事件に巻き込まれた形で仲間の超能力者が殺されてしまい、その能力者が担当していたミッションを引き継ぐこととなった。そのミッションをクリアしていくために、瞬が働く組織事務所のメンバーが活躍する。

 

どのキャラも特殊能力を持っているという点を差し引いても個性的で際立ち、ストーリーも最初の設定さえ受け入れれば非常にシンプルで面白いミステリーテイストになっている。ただただ面白い小説を読みたいという時にはオススメです。

 

↓ こちら2015年の「このミステリーがすごい!」大賞を受賞した作品です

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 ↓ほかにもいろいろなジャンルの読書をしています。よかったら覗いてみてください。

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21世紀にあなたの仕事はもう存在しない④『インターネットの次に来るもの-未来を決める12の法則-』【読書屋まとめ!】

どうも、こんにちは!アリガテンです。

『インターネットの次に来るもの-未来を決める12の法則-』という本をご存じでしょうか。Kevin Kelly(ケヴィン・ケリー)という人が著者です。

原書タイトルは"THE INEVITABLE" 直訳で「避けられないもの」

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邦題にあるとおり本書は12の法則(12のキーワード)ずつ章が立てられている。これらの12のキーワードは完全に独立するものでなく、相互に連関し合い、重複するところも存在する。12のキーワードが未来を語るうえでの道しるべとなっている。

 

今日は「FLOWING-流れていく」を紹介します。

1.BECOMING-なっていく

2.COGNIFYING-認知化していく

3.FLOWING-流れていく

4.SCREENINGー画面で読んでいく

5.ACCESSINGー接続していく

6.SHARING-共有していく

7.FILTERING-選別していく

8.REMIXING-リミックスしていく

9.INTERACTING-相互作用していく

10.TRACKING-追跡していく

11.QUESTIONINGー質問していく

12.BEGININGー始まっていく

 

私たちがそれを望もうが望まなかろうが「避けられないもの」は必ずやってきます。テクノロジーの進化。それこそが不可避であり「避けられないもの」なのです。その「避けられないもの」を前に未来への知識を少しでも得ておくことは必要なことかもしれません。 

「FLOWINGー流れていく」とは

「FLOWING-流れていく」の意味はイメージしやすいように思う。インターネットという世界において情報は「常にそこにある」のではなく「常に変容している」と認識したほうが正しい。

インターネット上にある情報は基本的にフリーであり、だれもが手にできるものである。インターネットに触れたものは全てコピーが可能となる。コピーされたものがまたコピーされ、そしてまたコピーされていく。その過程で、情報を手にする側のニーズに合わせて情報は更新ないし姿を変えてインターネット上に存在し続ける。

また、それらの情報の更新や変容はリアルタイムで行われている。たとえばネットニュースを見たときに数日前の情報にはそこまでニーズはないだろう。常に最新のニュースがアップされていることを私たちは求める。それはインターネット上の世界にリアルタイムの情報が次々と流し込まれ、それ以前のものは過ぎ去ったこととして流れていくからである。

 

「FLOWING-流れていく」とは、まさにこの状態がさらに促進されることをいう。

誰もが自由に情報に接近し、また情報を発信する側に回る。情報は常に流れている。流れているからこそ、いつでも情報に接近できる。 

このイメージは流れていない世界を想像してみるとより明確にイメージしやすい。

具体例として、テレビ番組とインターネット上の動画を比較してみよう。

テレビ番組は決まった曜日の決まった時間にしか見ることができない。誰もがいつでもというわけにはいかない。一方、インターネット上の動画は一度アップロードされたものであれば、誰でもいつでもその動画を見ることができる。それはテレビ番組が固定化された概念の世界にあることとインターネット上の動画が常に流れている概念の世界にあることを意味する。

 

「FLOWING-流れていく」が変える価値

インターネットに触れたものは全てコピー化され、自在に形を変容させ、またインターネット上に流れ戻ってくる。その世界では、情報そのものには価値がなくなってくる。なぜなら、フリーで手に入ってしまうからだ。しかも、ニーズに見合った形に変容したものが。

情報そのものに価値がなくなったとしても、情報に対してお金を出すシーンはいくらでも存在するし想像できる。それはなぜかというと、情報そのものではなく、情報の周辺にある付加価値にお金を支払っているからである。つまり、その情報の周辺にある付加価値というものはコピーすることができず、コピーすることができない故に無料で手に入るものにお金を支払っているのである。

 

この性質を持つものに筆者は「生成的なもの」と名付け、以下の9つを上げている。

1.信用

信用は時間を掛けて得るものであり、コピーできない。信用のある情報と信用のない情報であれば前者の方が価値があると考えることは自然である。

2.即時性

コピーされフリーとなるには時間がかかる場合がある。たとえば映画上映初日にその映画のDVDが発売されることはないだろうし動画サイトにあがることもないだろう。(後者はゼロとは言わないが。。。)しかし、その映画を公開初日に見るために映画チケットを払うことは自然だ。いずれ、無料で観れることになったとしても。

3.パーソナライズ

その情報を使用・消費するようにカスタマイズされたものであればそこに価値を見出すことは容易だ。ミステリー小説が好きな人にはミステリー小説のオススメリストを、政治学が好きな人には政治関連の本をオススメリストを提供する。好みや興味は人それぞれことなり、ひとりひとりに見合ったものを提供することは価値となる。

4.解釈

情報自体は無料だが、その情報をどう扱うかに対して価値を付けることはできる。筆者は医療の分野でこの傾向が顕著に見えてくるだろうと述べる。たとえば、DNA検査はいずれ無料で実施されるようになる。しかし、その検査でわかったことの意味・どう行動すればよいかという解釈はお金をもらうに値する価値となる。

5.信頼性

品質の信頼性や発行の信頼性をイメージするとよい。誰がどのような目的で作成したかわからない情報よりも情報の発行元が明確となっている情報のほうが信頼がおけ、そこに価値を支払うことは可能だ。

6.アクセス可能性

所有するのではなく、いつでもアクセス可能であることはいまや価値の一つとなる。無料でダウンロードできる音楽だったとしてもそれが自分のデバイスの保存容量を食うものであったり他のデバイスとの同期が不可能であった場合、クラウド上で保管できどのデバイスでも自由にアクセスできるのであればお金を支払う場合もあるだろう。

7.実体化

インターネット上にあるものは全てコピー可能であり、それは実体を持たないことが可能にしている。それが、実体を持った途端コピーが困難になりたちまち価値を持つようになる。たとえば、好きなアーティストの曲やライブを視聴することはインターネット上で可能だが、そのライブに実際に行き参加するということになるとお金を支払うこととなる。なぜなら、実際のライブ経験はコピー不可能だからである。 

8.支援者

熱心なファンの中には好きなものの対象にお金を払いたいと考えている人が少なからずいる。支援者の力には価値が発生する。

9.発見可能性

どれだけ有用な情報であったとしても見つけられず見てもらえなければ無価値と同じものとなる。情報が集合し、利用者がその集合体にアクセスすることで単体では見つけられなかった情報にアクセスすることができるようになった場合、その発見可能性に対してお金を支払うことになる。

 

「FLOWING-流れていく」の4つの過程

「FLOWING-流れていく」には4つの段階がある。この4つの段階は全てのメディアにあてはまり、どの分野でもある種の流動性を持つことになると筆者は述べている。

 

1.固定的/希少

最初の情報・プロダクトの作成者は一人であり、それらを売ることで作成者は利益を得る。

2.無料/どこにでもある

その情報・プロダクトはコピーされ、ニーズの在る場所にはどこへでも到達する。1で述べた価値はここでほぼ失われる。

3.流動的/共有される

情報・プロダクトは分割される。一つの情報・プロダクトだったはずのものが複数のパーツに分解され、利用者はそれらのパーツを入手し、利用者の求める形に組み立てる。

4.オープン/なっていく

ただの利用者だったはずが2と3の段階によって情報・プロダクトの作成者となることが可能となる。そこで新たに作成されたものは斬新であり新たなニーズを生み出すことがある。

 

感想

 「FLOWING-流れていく」はとてもイメージしやすいものだった。それは現状で私たちの生活でありとあらゆるものがこの「FLOWING-流れていく」の変化に沿って進んでいることを体感しているからだ。

私たちは簡単に(Ctrl+Cだけで!!)インターネット上の情報をコピーすることができる。無料で動画をストリーミング再生できる。まさにこれが「FLOWING-流れていく」の原点だろう。

 

著作権とか特許とか情報の作成者には権利が与えられるのが当然と考えることも多いが、実際のところ、その考え自体を見直し、また情報の作成者はコピーされることこそ当然という認識の上で情報をうまく作成し利用したほうがいいのかもしれない。 

 

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【読書ブログ】2カ月が経って気づいたこと。【雑記屋!】

どうも、こんにちは!アリガテンです。

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このブログはいわゆる読書ブログとか書評ブログとかに分類されるものですが、個人的には、読んだ本を書き留めて記事を見返したときに「あぁ、あぁいう内容だったなぁ」という読書メモだったり、読者のみなさんがこの記事をきっかけに読書してみようと思ってくれたら嬉しいなというきっかけ作りだったり、そういう気持ちでブログを書いています。

ブログを開設したのは1月5日なのですが、記事を投稿し始めたのは2月14日からだったと思います。読書屋!(読書記事には【読書屋!】という文字をタイトルに入れています)の記事がほとんどを占め、雑記屋!(雑記記事です)が少し。2カ月毎日記事を投稿してくることができました。読者のみなさんのおかげです。ありがとうございます。

さてさて、2カ月毎日記事を書いて投稿したことで気付いたことがあります。他の有名な方々の書いている記事にもいくらか似たようなことが書いてあるかもしれませんが、それって本当だったんだというくらいの気持ちで読んでいただければと思います。

  • 気付き①1カ月単位でPV数があがってく
  • 気付き②読書ブログのジレンマ
  • 気付き③読者がいると楽しい
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5つのリドルストーリーが1つの男の思いを紡ぐ『追想五断章』【読書屋!】

どうも、こんにちは!アリガテンです。

また読んじゃいました米澤穂信作品。最近頻度高いですよね、すみません。 

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でも、どれを読んでもページがサクサク進んでしまうほど面白い小説ばかりなんです。読書初心者さんがサクッと面白い小説を読みたい!となったときはまず一番にオススメできる作家さんかもしれません!アリガテンが最近ハマっているなかでも、今日紹介するのは米澤穂信『追想五断章』です。

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本当に怖いホラー小説。『残穢』【読書屋!】

どうも、こんにちは!アリガテンです!

ふだんあまり読まないジャンルの小説を読んでしまいました。怖かった。ホラー小説です。文章でここまで恐ろしさを表現できるのはすごいなと。小野不由美『残穢』を紹介します。

普段は明るい気持ちになる小説を読むことが多いんですけどね!

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まず、この装丁みてください。ページをめくる前からちょっと気味の悪さが出ちゃってますよね。あまり自分の本棚に置いておきたくない装丁だったりします。

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この『残穢』は2013年の山本周五郎賞を受賞している作品であることからも小説としての物語性、作品の完成度などかなり高く評価されていると言えます。実際に読んでみるとなんだかドラマを見ているように物語の1シーン1シーンが頭の中で鮮明に描かれていく印象がありました。内容がホラーだけに読みながら終始怖いなぁ君が悪いなぁと思わざるを得ないほどでした。

主人公は作者本人でしょうか。怪談を得意とする女性作家が主人公。彼女の小説の読者に怪談があれば教えてくれとあとがき部分に記載をしていた時期があり読者から多くの情報が集まってくる。情報提供者はもちろん小説のなかで登場する人物は皆仮名を用いているという。ここでこのホラーはノンフィクションなのか!?という思いが頭を支配していく(実際フィクションか否かはわからない)。読者から届いた怪談の中に「岡谷マンション」に怪奇現象があるという情報があった。このマンションから物語は始まっていく。

マンションと怪談といえば、ある特定の部屋に怪奇現象が起こり、過去を紐解いてみるとその部屋で自殺やら殺人があった。そして、そこで亡くなった方が霊として出るんだというのが相場かもしれない。本書の中でも主人公はそう語るのだが、「岡谷マンション」の場合は少々異なる。複数の部屋で同様の怪奇現象が起こっていたのだ。そこで主人公はその謎を紐解くため聞き込み調査を始める。その調査を進めていくにつれて、マンションだけでなく隣接する集合住宅でも同様の現象が起きていることがわかっていく。

この小説の特異であり面白みとなっているところは、現代で発見した怪奇現象をどんどん過去にさかのぼっていく形で物語が進行し、同時にその謎の怪奇現象の背景が暴かれることだといえる。しかも、その謎が暴かれれば暴かれるほど、根が深く、手に負えない程強力な全体像が見えていく。語られてはいないが、最初はこの怪奇現象の謎を明らかにし解決することを目指していたのではないかと思う。しかし、問題が見えてくれば見えてくるほど、自分たちの対処できるレベルのものでないことがわかり、残った好奇心だけで問題に向かっていく様が伺うことができる。

小説のタイトルともなっている「残穢」。穢れというものが日本の怪談ではよく出てくる。その穢れという考え方は私たちの日常生活にも密着し、穢れを落とすための儀式などが生活に根付いている。たとえば、土地に建物を建てる際は地鎮祭を行う。これはその土地の穢れを落とし、建設工事がよく行われることを目的とした儀式だろう。そのような、穢れを落とすための儀式を行ってもなお、残り続けてしまうほど強烈な穢れ。その穢れの前では私たちは蛇の前の蛙よろしくなにもできない無力なモノとなってしまうのかもしれない。そして、その穢れは感染するかのようにいまも広がっているのかもしれない。

 

"穢れに触れる我々も、呪術的な防衛は行う。死者を供養し、土地を浄める。だが、あまりに強いためにそれでもなお残る何かがあるとしたら。「浄められずに残る何か――」時間の流れや呪術的な清めでも浄化しきれなかった残余の穢れ。"

 

ホラーの中身には触れず、表面的なおおまかな部分だけを紹介しました。ぜひ、読んでみてください。怖いながらも読みごたえのある小説です。 

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